統計数理研究所
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統計数理研究所公開講演会

例年、教育・文化週間(11月1日〜7日)関連行事の一つとして公開講演会を開催しております。この講演会では、一般の方を対象に、統計数理に関連したテーマをわかりやすくお話しします。

「スポーツがもっと面白くなる統計数理」

日時:2012年11月5日(月) 午後1:30〜4:30
開場:午後1:00
場所:統計数理研究所 大会議室
入場無料・登録不要
* 会場の収容人数(約160名)を越えた場合は、入場を制限させていただきます。
講演プログラム
伊藤聡(統計数理研究所 教授)

マジックナンバーの数理−優勝、昇格まであと何勝?

野球やサッカーなどリーグスポーツの熱狂的なファンにとっては、ひいきのチームの順位が気になるものですが、シーズンも終盤が近づくにつれて、あと何回勝てばリーグ優勝が決まるのか、あるいは下部リーグへの降格を免れるにはこの先何敗まで許されるのか、などといった話題が聞こえてきます。シーズンが始まったばかりの時点では、残りの試合すべてに勝てば優勝は間違いないでしょうし、すべてに負け続ければ最下位は免れないでしょう。勝敗の組合せが有限であることを考えると、シーズン中のどの時点においても、最終的にある順位以上になることが確定する最小の勝ち試合数、もしくは逆にその順位に届かないことが確定する最小の負け試合数というものが存在することは明らかです。このようないわゆるマジックナンバーと呼ばれる類の概念は、特に野球に対して用いられてきましたが、リーグスポーツのみならずいろいろな遊びにも応用できそうです。マジックナンバーを取り巻く数理について、皆さんと楽しく考えてみたいと思います。
当日の資料(pdf)
後藤健生(サッカージャーナリスト)

数字でサッカーを語ることは可能か

さまざまな記録や統計が語られる野球と比べて、サッカーの記録・統計というのは一般にはあまり馴染みがないのではないか? 新聞で紹介されるのはシュート数やCK、FKなどの数などくらいだろう。テレビ中継では「ボール支配率」という数字もよく使われる。ヨーロッパからの中継では選手の「走行距離」や「平均速度」などが紹介されることもある。さらに専門性の高いものでは「パスの本数」や「成功率」といった詳細な統計もあり、それもゾーン別、時間帯別の数字が準備されている。

しかし、そうした記録や統計は、野球の場合ほど大きな意味を持たないようにも思われる。たとえば「パス成功率」。パスというのはただ成功率が高ければ良いというものではない。「どのような状況で、どのようなパスをしたのか」が重要であり、"解釈"が伴わなくては意味を持たない。だが、サッカーでは状況を客観的に分類、表現することが難しい。

また、サッカーは番狂わせが多いスポーツだ。つまり、試合内容が結果に反映されないのだ。とすれば、サッカーの記録や統計には"原理的限界"があるということになる。
鳥越規央(東海大学理学部 准教授)

統計学で野球は進化できるのか
「マネーボール」の光と影

1970年代のアメリカでビル・ジェームスによって提唱されたセイバーメトリクスとは、野球というスポーツを数値データによって客観的、科学的に分析しようとする研究分野のことである。メジャーリーグでは、セイバーメトリクスによって生み出された指標に基づいて選手を評価している。昨年映画版が公開されたマイケル・ルイスの著書「マネーボール」では、財政難のチームを再建するため、アスレティックスのゼネラルマネージャー、ビリー・ビーンがセイバーメトリクスを駆使したチーム作りを行う過程が描かれている。このようにデータ解析を使用したチーム運営は日本のプロ野球においても徐々に浸透し、実際に結果を残しているチームも出現している。その一方で日本のみならず、アメリカにおいても現場ではセイバーメトリクスに懐疑的な態度をとり、理解を示してもらえないという実情も存在している。

本講演では、これまでに行ってきた、勝利確率の推移、統一球の影響の分析といったセイバーメトリクス関連の研究や、日本プロ野球におけるデータ解析の現状などについて、さまざまな事例を踏まえ紹介し、それによってプロ野球がどのように変わっていったのかを検証していく。
当日の資料(pdf)