コラム

サンシャインコーストにて

大西 俊郎(データ科学研究系・助教)

 現在、オーストラリアのサンシャインコースト大学で客員として研究しています。テーマはクイーンズランド州の降水量データの解析です。

 サンシャインコーストはオーストラリア大陸東海岸の中ほどに位置し、ブリスベンの北約100kmのところにあります。ゴールドコーストと並ぶリゾート地として知られています。大きなビルが立ち並ぶゴールドコーストが外国人向けなのに対して、豊かな自然を楽しめるサンシャインコーストはオーストラリア人のためのリゾートといえます。

 サンシャインコースト大学のキャンパスは自然の中にあり、野生動物の保護地区(Protected sanctuary for wild life)となっています。写真のようにカンガルーがキャンパス内に生息しています。日本ではちょっと考えられないような状況です。

 ところが、残念なことにこのような豊かな自然がかんばつのために失われつつあるようです。クイーンズランド州政府のホームページには“drought conditions in Queensland are now at their toughest”という表現が見られます。また、地元で生まれ育った共同研究者のPeter Dunn 准教授のお話では、30年前と比べて明らかに降水量が減っているとのことです。

 今回の研究は、これまで約10 年間の研究の集大成として行っています。ベースとなるモデルとして、修士課程時代に椿広計先生(リスク解析戦略研究センター長)の下で研究した一般化線形モデルを採用しています。頑健な推定を行うためです。また、推定すべきパラメータの次元が高いため、Bayes 推定の枠組みを利用します。Bayes 推定については博士課程での指導教官である柳本武美先生(中央大学)と共同研究を行ってきました。興味深いことに、今回扱う降水量モデルはその尤度関数がlocation familyと同じ形をしています。Location family に関する研究は博士論文の大きな柱の1つでした。

 ここ数年、地球温暖化およびそれに伴う気候変動が大きな関心を集めています。クイーンズランドのかんばつは顕著な例なのかもしれません。日本でも去年あたりから「ゲリラ豪雨」というこれまでになかった現象が観測されています。

 単なる確率的な変動であって心配する必要のないことなのか、あるいは、地球温暖化などの外的要因によるものであり、早急に対策を講じなければならないのか。このような判断はまさに統計科学の最も得意とする分野といえます。気候変動について統計科学に基づく提言を行うことができればと考えております。

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