"Maximal inequality" は,i.i.d. データに対する function indexed empirical process の理論における最も基本的な数理的道具のひとつである.
それは例えば,統計的学習理論においてリスクの上界を VC 次元の概念を経由した covering number のエントロピーを用いた評価式で押さえるための道具として利用されている.
(これについては,東大の鈴木大慈さんのIBIS2012でのチュートリアル講演のスライドが参考になると思います:
http://www.simplex.t.u-tokyo.ac.jp/~s-taiji/Japanese_publication.html
の一番上です.)
このセミナーでは,その最新結果である"Stochastic maximal inequality" の報告を行う.
(1) では,まず,i.i.d. の場合について,古典的中心極限定理の無限次元版,新しい Donsker class の導出,
entropy によらない maximal inequality, VC 次元が有限であるための新しい必要十分条件,entropy によらないJain-Marcus の定理の紹介を行う.
次に,セミパラメトリックモデルにおける adaptive 推定量を構成することへの応用を,特に Cox 回帰モデルの場合を題材として議論する.
最後に,これらの元となる"Stochastic maximal inequality" と,その証明のアウトラインを紹介する.
(2) では "Stochastic maximal inequality" と,その帰結として得られる諸定理のうちのいくつかの証明の詳細を検証する.