統計数理研究所

角田達彦先生による講演

日時
2011年2月7日(月) 15:00-16:00
場所
統計数理研究所 セミナー室5 (3階D313,D314)
講演者
角田 達彦 先生
(理化学研究所ゲノム医科学研究センター)
タイトル
次世代シークエンサーによる医科学研究の統計科学・情報科学的課題
概要

2003年のヒトゲノム配列解読完了宣言の後,個人間の配列の違い(多様性)が調べ始められた.
中でも一塩基多型(SNP)は,糖尿病など多くの人がかかる生活習慣病の原因あるいはマーカーとなる可能性が高いため, SNPのカタログを作ることがなされた.特に東大医科研とJSTによるJSNPは,遺伝子周辺・高精度・高密度・網羅的で, 世界の代表である.SNPを患者集団と一般集団とで調べ比較することをゲノム上で行うことをゲノムワイド関連解析というが, 2002年,当ゲノム医科学研究センターから世界初の成果(心筋梗塞関連遺伝子発見)を発信した.
その方法を遺伝子外にも拡張し適用するため,国際HapMap計画が発足し我々も参画した.
得られたSNPセットがチップに載せられ,我々に遅れること5年後,世界でゲノムワイド関連解析が爆発的に広まった. さて,東大医科研と当センターはさらに先んじ2003年,47疾患,30万症例のDNA・血清・ 臨床情報を集めるバイオバンクジャパンを立ち上げ,多くの疾患・薬剤応答関連遺伝子を発見した. そして今,次世代シークエンサーによるパーソナルゲノムの解読により,より個人的な多様性の解析も可能になりつつある. 特に日本人の標準ゲノムセットを持つことは医学・集団人類遺伝学研究で極めて重要である. 我々はその一環として日本人の全ゲノム解読・包括的解析を初めて行った[1].また現在,国際がんゲノム研究を進めている[2]. 今や全世界の医療システムとして個人ごとの治療法の選択,予測による予防が視野に入ったが, 多くの人の膨大な全ゲノム配列データを正確,高速,詳細,包括的に解析する必要がある[1]. また疾患研究の解析手法にも戦略が必要である.本講演では, 次世代シークエンサーによる配列決定での統計科学・情報科学的課題について議論を行う.

[1] A.Fujimoto, H.Nakagawa, N.Hosono, K.Nakano, T.Abe, K.A.Boroevich, M.Nagasaki, R.Yamaguchi, T.Shibuya, M.Kubo, S.Miyano, Y.Nakamura, and T.Tsunoda. Whole genome sequencing and comprehensive variant analysis of a Japanese individual using massively parallel sequencing. Nature Genetics, 42, 931-936 (2010).
[2] The International Cancer Genome Consortium. International network of cancer genome projects. Nature, 464, 993-998 (2010).

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