山岸俊男教授による講演
- 日時
- 2010年6月28日(月)14:30 (〜16:00)
- 場所
- 統計数理研究所 講堂(3F)
- 講演者
- 山岸俊男 教授
(北海道大学大学院文学研究科教授、ワシントン大学社会学部盟員教授)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B1%B1%E5%B2%B8%E4%BF%8A%E7%94%B7
http://lynx.let.hokudai.ac.jp/members/yamagishi/
- 講演タイトル
- 評判と信頼について
- アブストラクト
- 各種の国際比較調査や実験の結果は、日本人が他者一般に対して示す「一般的
信頼」の水準が低いことを明らかにしている。この違いを理解するためには、ま
ず「信頼」と「安心」の違いを理解する必要がある。演者は「信頼」と区別され
る「安心」を、相手を取り巻く誘因構造の性質に求めている。すなわち、相手が
自分を裏切れば相手にとって困った事態が生じる状況が存在している場合に、相
手は自分を裏切ることはないだろうと考えるのが「安心」である。たとえば十分
な担保が提供されていれば、どんな相手にであれ安心してお金を貸すことができ
る。これに対して、担保を提供できない相手に対してお金を貸すかどうかを考え
る際には、相手が信頼できる人間かどうかを考える必要がある。これまで日本社
会が「信頼社会」だと考えられてきたのは、実は集団内での相互監視に支えられ
た安心社会だったからである。集団内での相互監視が安心提供を可能とするため
には、集団が外部に対して閉ざされており、集団から排除された人間の行く先が
限られている必要がある。しかし現在の社会では、こうした集団の閉鎖性は大き
な機会費用を生み出す。そのため安心社会は現在、大きな転機を迎えている。す
なわち、機会費用の発生を抑えつつ信頼を創出しなければならない状況に直面し
ている。そのためにはどのような手段が可能なのか。オークション実験の結果を
参考に考えてみたい。