第49巻第2号241−260(2001)  特集「統計環境におけるインターネットの利用」  [原著論文]

インターネット環境における統計科学普及の
ための教育用サイト構築の試み

東洋大学 渡辺美智子
純心女子短期大学 末永勝征
立教大学 竹内光悦
鹿児島大学 宿久洋
立教大学 山口和範
価大学 浅野長一郎

要旨

コンピュータ・ネットワークが急速に普及し膨大な量のデータが電子的に蓄積されている現在,その有効利用と統計分析処理が課題になっている.その結果,学生はもとより一般社会人に対して,適切な統計分析のために必要とされる教育内容や技術指導の具体的な方法論の研究が必要とされている.一方,近年のインターネットの普及により,統計教育に関してもパーソナル・コンピュータ(PC)上でのマルチメディアや動的グラフの利用,各種のデータを提供するWebサイトへのリンクなどの諸機能を活用した新しい教材開発の道が開けている.

こうした現状を背景として,筆者等のグループは,統計教育および統計科学の普及を効果的に支援するためのツールとして,幾つかの教育用Webサイトを構築した.具体的には,インターネット上でインタラクティブに統計基礎教育を行う「統計学習用インタラクティブ・テキスト:ITLS(Interactive Text for Learning Statistics)」,検索機能を備える統計科学関連書籍についての「電子図書システム:EBSA(Electronic Books for Statistical Analysis)」,それに関連した「統計専用検索エンジン:Integrated Search Page」システム,そして表計算ソフトウェアExcelなどのインターフェイスを介して呼び出し可能なDLL(Dynamic Link Library)やDLLを利用した分析マクロをWeb上で提供する「教育用統計分析プログラムの公開サイト:DLLSA (Dynamic Link Library for Statistical Analysis)」である.本稿では,これらの特徴と主な機能を紹介し,また,これらのサイトの統合化に関する可能性およびインターネットの利用環境を活用した統計教育のための今後の組織的な展開が,統計科学の普及と裾野の拡張に必要であることを論じた.

キーワード:オンライン・インタラクティブ・テキスト,統計科学,電子図書システム,統計専用検索エンジン,統計分析用DLL,教育用Webサイト.

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第49巻第2号261-275(2001)  [統計ソフトウェア]

統計グラフライブラリの開発とWebへの応用

広島大学 佐藤健一
広島大学 大瀧慈

要旨

Windows OSの普及と共にその開発環境も整備されてきた.これにより,従来のコマンドライン形式のアプリケーションだけでなく,グラフィカルなユーザーインターフェイスを持つ ものも容易に作成できるようになった.本稿では,こうした状況において汎用的に利用され得る統計グラフライブラリについて議論し,実装されたライブラリの仕様について説明する.また,その利用例として,Web上のグラフ描画システムを取り上げる.

キーワード:Windows OS, DELPHI, データベース,グラフライブラリ.

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第49巻第2号277-292(2001)  [統計ソフトウェア]

主成分における変数選択プログラムのWWWへの実装

岡山大学 飯塚誠也
岡山理科大学 森裕一
岡山大学 垂水共也
岡山大学 田中豊

要旨

主成分分析における変数選択プログラムVASPCA(VAriable Selection in Principal Component Analysis)のWebバーションであるVASPCA/Webについて報告する.VAPCA/Webは,RubyとPerlを用いたCGIによって動作し,Rを統計エンジンとするサーバーサイド型のオンラインプログラムである.Web上に実装することにより,広く統計解析(ここでは主成分分析における変数選択)が実行できる環境を提供し,新しい手法などを即時的に公開し体験できるプラットホームの構築を目指したものである.このプログラムでは,先行研究を含めた7つの変数選択手法が実行でき,ユーザーの要求に合わせた選択が可能である.プログラムのフローは,(1)データの入力(2)変数選択手法の選択(3)通常の主成分分析の実行(4)主成分数・選択規準・選択手順の指定(5)変数選択の実行(6)結果(選択変数群と規準値)の出力となっている.これにより,主成分分析における変数選択が手軽に行えるようになり,複数ある選択規準のうち,目的の選択規準ですぐに選択を実行したり,いくつかの選択規準による結果を比較したりできるなど,実際の場面に対応できる環境を構築することができた.

キーワード:統計解析プログラム,オンラインプログラム,VASPCA/Web.

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第49巻第2号293-303(2001)  [統計ソフトウェア]

VRMLを利用した統計グラフ表現

多摩大学 山本義郎
岡山大学 垂水共之
北海道大学大学院 佐藤義治

要旨

Webでの統計サービスが一般的となりさまざまな方法で提供されているが,統計グラフについてはほとんどが静的なものである.動的なグラフ表現はJavaにより可能であるが,他にも動的・対話的な機能を実現するための方法としてプラグインを利用するものがある.そのようなインターネットテクノロジーを活用することにより,簡単に高度でインタラクティブな機能を利用できる統計グラフ表現が可能となる.

VRML(Virtual Reality Modeling Language)はVRMLブラウザやWebブラウザのためのVRMLプラグインを利用することにより仮想空間を実現するモデリング言語である.本論文では,VRMLを利用して実現可能な統計グラフ表現を考察することにより新たなテクノロジーを効果的に利用することの有効性を示す.また,VRML統計グラフを作成する際の補助となるよう,統計グラフのプロトタイプを作成しホームページ上に公開するとともに,VRMLグラフを作成するためのWebアプリケーションを構築した.またVRMLの短所を考察することにより,この種の方法を利用する上での留意点を示す.

キーワード:VRML, 3D統計グラフ,対話的グラフ手法.

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第49巻第2号305-315(2001)  [統計ソフトウェア]

EXCEL上の時系列解析ソフトE-Decompの開発

統計数理研究所 佐藤 整尚

要旨

近年,ソフトウエアの実行環境は変化が激しい.統計プログラムを開発する立場としては,なるべく,ユーザーのニーズに立って新しい環境にも対応することが重要である.しかしながら,すべての部分を環境ごとに書き直していては時間がかかり,現実的ではない.本論文ではE-Decompというソフトウエアの紹介とともに,異なるアプリケーションを連動させて,開発負担を少なくすることを目指した開発例を示す.E-DecompはMicrosoft社製の表計算ソフトEXCEL上で動作する1変量時系列解析ソフトウエアであり,その特徴は時系列分析に必要な計算を簡単な操作で実現できる点である.実行可能な手法はWeb上の時系列解析サイト,WebDecompとほぼ同じであり,操作の方法も似ている.実はこの2つのソフトウエアはユーザーインターフェースの違いがあるが,内部の動作プログラムはほぼ同じものを利用している.今回の開発の特徴はRとR-(D)COM Interface という環境を最大限利用することによって,Web Decompのソフトウエア資産を継承して,開発コストを抑えた点である.

キーワード:時系列解析,季節調整,自己回帰モデル,Decomp,EXCEL.

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第49巻第2号317-331(2001)  [原著論文]

インターデータベース
—DandDインスタンスのエージェント化—

慶應義塾大学 横内大介
慶應義塾大学 柴田里程

要旨

インターネットを活用して,必要なデータを取得したり,逆に自分が取得したデータを公開したり,さらには解析した結果やモデルの 公開あるいはその蓄積を円滑に行うためには,それなりの仕掛けが必要である.本論文では,そのような仕掛けの一つとして,DandD(Data and Description)ルールに もとづいて生成されたDandDインスタンスをユーザとデータの間を仲介する一つのエージェントとして活用するインターデータベース(InterDatabase)のアイディアを紹介するとともに,その中核的な役割を果たすDandDサーバの構築について述べる.

キーワード:データ,インターネット,データサイエンスDandD, XML.

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第49巻第2号333-343(2001)  [研究詳解]

Java言語による統計解析システムJasp

総合研究大学院大学 藤原丈史
統計数理研究所 中野純司
徳島文理大学 山本由和
徳島文理大学 小林郁典

要旨

安価で強力なパーソナルコンピュータとインターネットの普及により,計算機の環境および技術は,現在,大きく変化し,発達している.統計解析の際に,それらを効果的に利用できるようにするための統計解析システムを開発することは,今後の統計学の普及と発展のために欠かせないものである.

われわれは,最新の技術を容易に利用できるように設計されている Java 言語を 用いて,新しい統計解析システム Jasp(JAva based Statistical Processor)を 開発している.Jaspは,先進的な計算機技術を統計解析において簡単に利用できるようにすることを目的とする.そのために,関数を中心とする言語とオブジェクト指向言語を融合した統計解析のための言語,独立に,または統合的に利用でき るグラフィカルユーザインタフェースとキャラクタユーザインタフェース,ネットワークを用いた分散処理,他言語とのインタフェースを含む高い拡張性,などを実現している.

本稿では,既存の統計システムを考察しながら,Jasp の必要性,目的および特徴などを述べる.

キーワード:サーバ/クライアント,統計解析システム,分散処理,ユーザインタフェース,Java.

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